夏目漱石からの伝言
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15 夏目漱石(なつめ そうせき)1867〜1916
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小説家、英文学者。東京生まれ。本名金之助。イギリスに留学、帰国後一高、
東大で英文学を講義。明治38年『吾輩は猫である』により作家として出発、
近代的知性に基づき倫理的主題を追求する数多くの作品を書いた。
著『三四郎』『それから』『門』『明暗』など。
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              注)■は偉人の言葉 ◇は筆者の解説とコメント


■ ある人は十銭を以(もっ)て一円の十分一と解釈し、
 ある人は十銭を以て一銭の十倍と解釈すと。
 同じ言葉が人に依(よ)って高くも低くもなる。

 

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◇4月1日からいよいよ学校の週休2日制が始まる。
ずいぶんいろいろなところで議論されているが、私はどちらでもいいと思う。
2日制になったのなら、なったで、子どもたちに有効な時間の使い方を提供し
てあげればいい。

3月24日、NHK「課外授業 ようこそ先輩」の先生は僧侶であり芥川賞作家
の玄侑宗久さんだった。「ようこそ先輩」というタイトルどおり、活躍中の先
輩が母校に帰って子どもたちに自分の専門分野をもとに授業を展開するという
ものである。

今回の授業を簡単に説明すれば「世の中に幸も不幸もない。心次第で不幸だと
思っていることに関していろんな見方を手に入れることができる」。これを小
学校6年生に体感させるのである。

玄有さんと子どもたちのこんな場面があった。

玄侑さん、何気なく、ある子どもの机の上にある筆箱を床に落とす。
(落とされた子どもはムッとする)
玄侑「今、これが落っこちたけど、これは幸せなことかな、不幸なことかな」
子どもたち、声を合わせて「不幸なこと」。
玄侑「それじゃ、これを拾おうと思って手を伸ばしたら千円札を見つけました。
   これはよいこと? 悪いこと?」
子どもたち、声をそろえて「よいこと!」。
玄侑「ところが、千円を手にしてラッキーと思って、頭をもたげたら机の角に
   頭をぶっつけて入院してしまった。これはよいこと? 悪いこと?」
子どもたち「悪いこと!」
玄侑「このように筆箱を落ちただけでは、いいことか悪いことかわからない。
   自分が今、ものすごくいやだなあと思っていることでも、別な見方を知
   ったならば、不幸じゃなくなるかもしれない。みんなの心しだいで変わ
   るんです」

そこで、玄侑さんは子どもたちに「○○くんの10大事件史」という各自のパ
ネルに、12年の人生の出来事を書き込ませ、それぞれの項目にニコニコマー
クと悲しみマークを貼らせた。
「かわいがっていたペットの死」「転校、入院などの悲しいこと」「弟の誕生、
家族旅行やコンクール入賞」などいろいろ出てきた。

ある生徒は、
「0歳 三男じゃなくて長男がよかった」(悲しみマーク)
その理由、こきつかわれるから。

ある生徒は、
「0歳 三女で生まれ、お姉ちゃんにかわいがってくれる」(ニコニコマーク)

立場は一緒ながら、感じ方は違う。

玄侑さんは6年生までおねしょをしていたことを告白した。そのことを作文に
まとめた。
「お月さまの秘密」。だいたいの概略は、
おねしょをしていることを友達に告白。するとその友達は「おねしょは感受性
豊かな証拠。寝ながらにして、プールで泳いだり、トイレに行ったりする情景
をあまりにもありありと見ることができるのだから。感受性豊かな子どもを選
んで、月のうさぎがおねしょをさせる。月が輝くために・・・」

子どもたちにも「ちょっとイイ話」という題名で、
「自分が不幸だと思っていることに関して、いろんな見方を手に入れて、たん
る不幸な話じゃなくて、なかなか味のあることだな、これは、と思うための取
材をしてもらいます。そして作文を書いて下さい」。

「おばあちゃん」というあだ名の少女は、自分が森の白髪の目立つクマの物語
を書いた。
失恋をした少年は、15年後にタイムスリップして自分の結婚式の光景に出会
う。自分が15年前に失恋したことが、よい思い出として残っていると語る自
分を見て元気になる物語。
散歩中の愛犬が、自分のせいで自動車事故にあった。しかし、そこには愛犬か
ら生きることの大切さを教わった物語。
三男に生まれ、長男がよかったと悲しみマークをつけた少年は、実際に家族に
取材したところ、小さい頃、兄がどれだけ自分を可愛がってくれていたか、父
親が二人いると言われたほど弟を可愛がった。兄は逆に、そんな三男の少年が
うらやましいと言う。これを「7月の海」という物語にした。

どれもすばらしい。悲しみマークと思っていたことが、ちょっと見方を変える
と、癒しに変わる。また、一見、不幸と思われるその出来事があってこそ、人
生に深みと味わいが出てくる。

最後に、玄侑さんは、こんなことを言っていた。
「本当に苦しいことにどう対処したらいいかを体験してもらいました」。

さて、学校の週休2日制で生まれた時間を、こんなすばらしい課外授業にして、
私たち大人がプレゼントしてあげれば、未来に生きる子どもたちがどれだけス
トレスのない生き方ができるだろう。また、心豊かで想像力のたくましい子ど
もたちが、きっと育つはずである。



   



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