西田天香からの伝言
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8 西田天香(にしだ てんこう) 1872〜1968
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滋賀県生まれ。小学校卒業後、18歳のとき滋賀県知事大越亨に面談、
その二宮尊徳の報徳思想に共感し、2年後兵役を免れるため北海道開拓民として移住。
開墾事業の監督となったが、資本家と小作人の間の紛争調停に苦しみ、
のち数年間懐疑と求道の放浪生活を続ける。
1905年長浜愛染堂で断食中、乳児の泣声に無心の境を悟り、
同年京都鹿ヶ谷(ししがたに)に「一灯園」を開設、懺悔生活を始め、
「おひかり」による内面的救済を求め、無所有の共同生活をめざす。
一灯園はのち京都山科に移り、本部光泉林,諸学校施設などをもち、
多数世帯の大家族的生活が実践されている。
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              注)■は偉人の言葉 ◇は筆者の解説とコメント


■ 山陽が慰(なぐ)さみ半分に描いたような絵くらいをば、
 何千円てな金を出して買わねばならぬような人になってはなりませぬ。
 手前が慰み半分に描いた絵を、
 人が何千円でも出して買いたくなる程の人物になるのです。
 そんなものを飾りたてて自慢せねばならぬような
 さもしい根性になりなさるな。
 あんたの居る所がどんなに貧しい家でも、
 そこを中心に人が集まるようになる程の人物になりなさい。

 
      ※「山陽」は頼山陽のこと。江戸後期の儒者、書家。
 

          *****


◇今、NHKの朝ドラで「ほんまもん」を放映している。主役の木葉(このは)
がほんまもんの料理人を目指すというストーリーである。尼寺に精進料理の修
行にはいり目下修行中。テレビを観ながら、知人の息子K君のことがフト頭を
よぎった。

すがすがしい秋晴れのある日、ネットで知り合い、親しくしていただいている
方から「息子のKがデザイン業界で仕事を見つけるために来阪中。話を聞いて、
アドバイスをしてほしい」というメールが届いた。これも何かのご縁かと、快
く引き受けた。

数日後、さっそくK君と待ち合わせて、作品を見せてもらい、今後の希望も聞
かせてもらったが、今の彼にまず必要なのは「基礎づくり」であると思った。

今まさに「インスタント時代」という言葉がピッタリの時代である。スーパー
をのぞけば冷凍食品、インスタント食品がたくさん陳列され、その品揃えには
驚く。電子レンジでチンすれば、あっというまに食卓に並ぶ。これがまた、そ
こそこ旨い。

インスタントの傾向は、デザイン業界にも押し寄せている。コンピュータの普
及によって、素人でもそこそこの作品が作れるようになった。文字を打ち込ん
で、色をつけて、写真を張り込んで、ちょちょいのちょいと細工すれば、スー
パーの冷凍食品のように、そこそこの作品が仕上がる。

こんな具合だから、デザインなんてものは素人でも簡単にできるという錯覚を
起こしやすい傾向がある。技術面をコンピュータがフォローしてくれるので、
確かにチョットばかりコンピュータが使えるようになって、そこそこの感性が
あれば、なんとなくインスタントの作品を作り上げることはお手のものである。
ここに、インスタント・デザイナーの誕生である。

技術の進歩は、何でも簡単に、そこそこのクオリティーや満足を得ることがで
きるようにしてしまった。しかし、忘れてはならないのは、これはあくまでも
「カタチの上」の話であるということ。カタチの上ではそこそこゴマカシも効
くだろう。だが「ほんまもん」はごまかしが効かない。

「ほんまもん」に必要な条件はなんなのか。それは「心の基礎づくり」である。

「基礎」とは、技術のみでなく、その根底には心の持ち方を言うのである。基
礎には「技術の基礎」と「心の基礎」がある。その両方が整ったとき、はじめ
て「ほんまもん」にたどり着くことができる。あえて「技術の基礎」と「心の
基礎」のどちらかに比重をつけるならば、間違いなく「心の基礎」であると思
う。「心の基礎」が固まれば、つぶしがきくようになる。

朝ドラの中で、寺への訪問客に出す料理の一品として、あるおばあちゃんが奉
仕で「タラの芽」のてんぷらを揚げていた。揚がったてんぷらはお世辞にもカ
タチは良くなかったが、主人公は食べてビックリ、その味は「ほんまもん」だ
った。おばあちゃんは、ただただ若い頃にいただいたご恩に報いんがために、
一心に奉仕の心でてんぷらを揚げた。その心が「ほんまもん」を作ったのであ
る。料理が「ほんまもん」ということは、その料理人の心が「ほんまもん」だ
からである。

人は心で考え、心でイメージし、心で未来を創り上げる。カタチは心の産物。
まず心を整えること、これが「ほんまもん」を作り上げる、重要課題である。
昔の職人は「見て覚えろ」と言った。何を見て覚えるのか、それは師の技術の
奥に流れる「心」。心は言って教えられるものではない。そこに流れる見えな
い何かを感じとらなければならない。

「技術の基礎」も大事だと思うが、何よりも「心の基礎」これを大事にしなけ
ればならない。朝ドラ「ほんまもん」の主人公と息子のKくんが何となくだぶ
って見えた。彼にもどうせなら「ほんまもん」を目指してほしい。




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